本日の卓話 第1307回 5月17日(水)

竹内支店長

熊本ロータリークラブ所属
日本銀行 熊本支店 竹内 淳一郎支店長

熊本地震関連特別レポート vol. 1
震災 1 年後時点での県内経済情勢(総括)

(はじめに)
○震度 7の大きな揺れを の大きな揺れを 2度も記録した熊
本地震から、 1年が経過しようとてい ます。
県民の皆様および内企業は、甚大な被害を受け、熊本経済
も、被災か ら暫くの間、 大変厳しい状況に陥りまた。現在も、
生活や経営を余儀なく される県民、企業は残っています。も
っとも、官民さまざまな経済主体が力を合わせ復旧・復興に
向け努力してきたこともあり、経済全体としてみれば、しっか
りとした回復基調に復しています。稿では、震災後 1年の節
目タイミングを捉え、震災後の県内景気の足取りと現状、今
後の展望や課題を整理しています。

< ポイント >
1、熊本地震の後、当地の経済情勢は、工場の操業停止や営
業施設の休業など供給面の制約を主因に、大変厳しい状
況に陥った。もっとも、官民挙げての懸命な復旧作業など
により、供給面での制約は、徐々に緩和に向かった。また、
地震保険金の迅速な支払いなどを背景に、家計の生活再
建に向けた需要が逸早く動きだし、続いて、国による直轄
工事も早い段階から進められる中で、熊本県の景気は、秋
口には、持ち直しに転じた。

2、秋以降は、解体工事の進捗に伴い、住宅着工が顕著に増
加し始め、インフラの災害復旧工事も、先行する国に県が
続き、最近では、市町村まで拡がりをみている。民間の事
業用施設等の建築投資も、グループ補助金の認定が進む
につれて、2017 年入り後には、目立って増え始めた。以上
のような復旧・復興需要に加え、グローバル需要の拡大に
直面する製造業では、生産活動が、震災前の水準をかなり
超えて増加を続けている。こうした下で、熊本短観でみる
企業経営者の景況感も、V 字回復を続けた。このように、
熊本県の景気は、2016 年冬場の早い段階には、回復局面
に転じた。

3、震災後 1 年の以上のような景気の足取りを振り返ると、
確かに、個々にみれば、依然として、厳しい状況に置かれて
いる家計、企業が残っている。もっとも、あれだけの甚大な
被災状況やその後の経済の落ち込みから、僅か 1 年という
期間しか経過していないことを考慮すると、県内の経済全
体としてみれば、順調に回復してきたと評価できる。

4、この点を、幾つかの代表的な経済指標に即して整理する
と、失業者数は 5~6 月にかけて阿蘇地域を中心に大きく
増加したものの、程なく、減少に転じた。倒産動向は――
阪神・淡路大震災や東日本大震災の後とは異なって――、
異例に落ち着いている。また、生産活動や企業の景況感は
、震災前の水準を遥かに超え、V 字回復してきた。

5、比較的、早期に経済活動が正常化し、しっかりとした景気
回復に向かった背景には、企業や金融機関、国、地方自治
体、更には県民を含め、個々の経済主体が、過去の震災事
例や経済危機時の経験に根ざした教訓や知見をベースと
して、一致して、迅速な対策を講じてきたことの寄与が大き
い。

6、これらには、国や県、市町村での迅速な補正予算の策定や
、雇用調整助成金の拡充、グループ補助金制度の迅速な
導入、信用保証制度の拡充や運用面での迅速な対応、金
融機関による債務返済に関する条件変更や低利での緊急
対応融資などの施策が寄与した。これらは、何れも過去の
経験を踏まえ、対応のスピードをはじめ制度面・運用面で
被災者・企業に対する肌理細かい配慮が施されるなど、多
くの学習効果が働いている。

7、先行きの県内景気を展望すると、潜在的にはかなり大き
な復旧・復興需要が残されているほか、震災前から既に計
画されていた熊本市内の再開発事業、更には、「創造的復
興」のスローガンのもと、震災後に浮上した大型投資等が
加わる。したがって、向こう数年間、息の長い景気回復が続
き、内生的に回復基調が腰折れる要素は少ない。 8. 以上
の蓋然性の高い景気見通しにまつわるリスク要因の第 1
は自然災害、第 2 は海外経済や国際金融市場発の外的シ
ョック、第 3 は、地震保険金などに支えられている個人消
費が、所得改善の遅れに伴い息切れすること、などが挙げ
られる。 9. マクロの景気自体は、順調に回復基調を辿ると
見込まれるが、幾つか、懸念すべき点は残り、必要な政策
対応などを講じる必要がある。第 1 は、阿蘇地区をはじめ
とする観光産業の回復の遅れ。第 2 は、震災後に加速した
生産年齢人口の流出や人口減少。第 3 は、企業誘致への
負の影響。第 4 は、廃業の増加。第 5 は、復興特需の一巡
後に生じる、関連需要の落ち込み、が挙げられる。なお、上
記 5 つとは別に、復旧・復興の担い手不足は、最重要の政
策課題であるため、別稿で整理し、論じることとする。

熊本地震関連特別レポート vol. 2
当地における人手不足の現状と課題(1)
齋藤 香(現金融市場局)、竹内 淳一郎

(はじめに)
熊本県の景気は、地域や業種によっては厳しい状況が続い
ているものの、復興需要の拡がりとともに、回復基調は一段
としっかりしてきている。震災後、ここまでの経済の足取りを
振り返ると、あれだけの規模の被災や、その後の経済の落ち
込み、更には、1 年という短い期間を考慮すれば、マクロの景
気は、順調に回復してきたと評価される。別稿で指摘したよう
に(2)、あらゆる経済主体が、東日本大震災などの際の教訓
を踏まえ、出来得る最大限の施策を迅速に講じたことが寄与
した。

もっとも、個々の状況をつぶさにみると、仮設住宅等での暮
らしが続き生活再建を果たせない家計、店舗や工場などの
被災などから厳しい経営を余儀なくされている企業は、数多
く残されている。また、住宅の竣工を待つ家計、社屋や工場
の復旧・復興を待つ企業なども、多数に上っている。阿蘇地
区を中心に交通インフラが寸断された状況も続き、観光業を
はじめ地域経済にも影を落としている。

こうした状況を解消し、1 日も早い復旧・復興、更には「創造
的復興」を展望した際に、最大の制約要因となっているのは、
明らかに担い手の不足である。瓦礫処理や土木、建築工事な
どでは、県外業者の参入などが進んでいるほか、行政サイド
でも、実態に即した規制緩和などの措置を一部講じている。
もっとも、絶対的に労働力が不足していることが、迅速な復
旧の制約となっている。

当地の人手不足は、強い復旧・復興需要という循環要因だけ
ではなく、少子高齢化、若年層を中心とした生産年齢人口の
県外への流出といった構造要因も強く影響している。換言す
ると、当地の労働力不足は、復興需要が一巡した後、和らぐこ
とがあっても、解消される蓋然性は低いと考えられる。
以上のような問題意識の下で、本稿では、まず、人手不足の
実情や背景を、データを基に、分析・整理する。その上で、あり
得べき施策などを論じる。結論を先取りすると、人手不足に
即効薬はなく、労働需要・供給双方において、総合的な施策
を講じるほかなく、同時に、出来ることから迅速に着手するこ
とが肝要である。本稿が、労働力不足問題に関心を集め、議
論の一助になることを期待する。

(1) 本稿作成に当たっては、作図において小林 誉幸のサポ
ートを得た。
(2) 詳しくは、4 月 13 日に公表した熊本地震関連特別レポー
ト vol.1「熊本地震 1 年後時点での県内経済情勢」(総括)
参照。

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